「ソニカ(初代)」&「セルボ(5代目)」のデザイン採点と販売台数予想
written on 2006/11/18
ダイハツとスズキによる、軽自動車販売トップの座を巡る争いが激化する中、両社から、ちょっと個性派の軽が発売されました。
ダイハツから登場したのは、自分らしさや二人の時間を大切にするカップルに向け、走りの質感革新を目指した、新ジャンルカーの「ソニカ」。
対するスズキが送り出したのは、年齢や性別を問わない幅広いユーザーをターゲットにした、スタイリッシュでスポーティーで上質かつ個性的な、新しいジャンルの軽、「セルボ」です。
どちらも、新しいタイプの軽だとアピールしている訳ですが、出てきたデザインは、まるで正反対。
「ソニカ」は、そっけない程に装飾を抑え、ボディシルエットだけで勝負している、高級「素うどん」タイプ。
片や「セルボ」は、極限まで全身を飾り立て、これ以上、何も加えようがないという域にまで達した、「B級全部入りトンコツラーメン」タイプ。
出汁の旨みと麺のコシでシンプルに勝負する「ソニカ」と、味がぶつかり合い過ぎて何を食べているんだか分からない状態になってしまった「セルボ」といった印象です。
もっとも、こうしたテイストの違いは、コンセプトを見れば一目瞭然。
爽快な走りを追求し、ストレートに「爽快ツアラー」をコピーに掲げた「ソニカ」は、デザインにも迷いはなし!
これに対して、「セルボ」のコンセプトは、「Fit on My Style(乗ること、持つことへの心の充足感)」。
これだけでも、意味がよく分からない上に、ターゲットユーザーは老若男女の全日本人ときたもんです! 「爽快な走りをイメージした、カップルのためのデザインにしてね」と言われればイメージも湧きやすいけれど、こんな的の絞りようのない注文をされたら、デザイナーは頭を抱えちゃうに違いありません。
結局、出てきたデザインは、いろんな車の特徴的な部分を適当に寄せ集めた、「スタイリッシュでスポーティーで上質かつ個性的」という複雑怪奇なものになってしまったのです。
そんな訳で、見れば見る程、いろんな車のモチーフが見えてくる、新型「セルボ」。
他車のいいとこ集めをしただけでは、良いデザインは作れないという格好の見本でもあるんですが、見方によっては、かっこよく見えてしまう可能性がない訳ではありません。実際、僕も、じっーと見ているうちに、サイドウィンドウ上部とリアウィンドウ下部を繋ぐラインと、ボンネットの開口線とヘッドライト外側を結んだラインには、三次元的な流れの美しさを感じるようになってきてしまいました。
だけれども、これじゃあまるで、ウルトラマンタロウに出てきた怪獣、タイラントです。歴代ウルトラ兄弟に倒された怪獣達の強力な部分を寄せ集めて誕生した、合体怪獣タイラントと同じです!
いろんな怪獣の強いところを合体させたなんて、子供にとっちゃ夢のような存在だけど、大人だったら、もっとバランスを重視しなくちゃいけません! よく考えりゃ、美しく見えた三次元ラインも、初代フォーカスや現行ステップワゴンから持ってきただけでした・・・。
ただ、最近の若者って、デザインを近視的に部分単位で評価する傾向が強いような気がするので、結構本気で「セルボ」をかっこいいと思っちゃうかもしれませんねぇ。
一方、そんな「セルボ」とは対照的に、「ソニカ」のデザインは実にシンプル。すっきり爽やかな走りを予感させる、コンセプトに忠実なデザインです。
だけれども、トゥデイを焼き直したボディシルエットを除けば、「ソニカ」のデザインは、すっきり爽やか過ぎて、何の特徴もありません。実用系のパッケージングであれば、まずはシンプルなデザインで参入するのが正解ですが、走りを売りにするならば、もうちょっと色気や軽快感が必要です。
残念ながら、趣味性の高い車としては無味無臭過ぎて、僕にはちっとも魅力的には見えないのでした!
といった訳で、どこか気になるけど、やっぱりかっこ悪い「セルボ」のかっこいい度は30点、分かりやすいけれど、興味の湧かない「ソニカ」のかっこいい度は35点!
方向性は違うけれども、かっこよさに大差はないですね。
さてさて、そんな2台のメーカー月販目標は、「セルボ」が5,000台で、「ソニカ」が2,000台。何と、強烈デザインの「セルボ」の方が、万人受けする「ソニカ」の倍以上を売ろうとしています。
もちろん、ソニカの背の低さや、ターゲットとするユーザー層のボリュームの違いも理由だと思いますが、一番大きな要因は、やはり価格でしょう。
単純に両車の価格帯を比べると、その差は約15万円。軽自動車にとっては、かなり大きな違いです。
デサインだけなら「ソニカ」の方が売れそうだけど、そんなことも考慮して、僕の販売台数予想は「セルボ」が月4,000台で、「ソニカ」が月2,400台!
「セルボ」の人気が上がらず、低価格を武器にした、第2のKeiになっちゃうかもしれないのが、ちょっと心配です・・・。
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