「ベリーサ(初代)」のデザイン採点と販売台数予想

written on 2004/7/20


ヴァンデンプラ・プリンセスやイプシロンなどの「小さな高級車」とまではいかずとも、「上質感」を売りにした小さな国産車は意外と沢山あります。イストはヴィッツの、MRワゴンはワゴンRの上級バージョンだと言えるし、ミラ・ジーノやeKクラッシィはベース車を飾り立てることで上質感を演出しています。

しかし、特にデザインに限って言えば、「上質感」という言葉が納得できるような車は殆どありませんでした。結局はデザインが子供っぽかったり、女性向けだったり、はたまたメッキパーツで飾り立てているだけで、少なくとも、大人の男性が乗って様になる車は存在しなかったのです。





そんな中、かなり本気の「上質感」を目指して登場したのが、マツダ「ベリーサ」。長い苦境の時期を乗り越え、やっと新世代の基幹車種が揃ったマツダにとって、初めての派生車ともなる一台です。



とは言え、実は「ベリーサ」には、まるで期待をしていませんでした。排気量とボディサイズはデミオと殆ど変わらないし、5ドアハッチバックのボディ形態もまったく一緒。かつてのマーク2三兄弟のように外観をちょいと換えただけの車を出す意味なんてあるのか、まずはミニバンとかワゴンといった別カテゴリーの派生車を出すべきなんじゃないか、と疑問に思っていたのです。

それに、メカニズムとパッケージにデミオとの差異が少ないのなら、よほどデザインに魅力がない限り、あえて高額な「ベリーサ」を買ってもらえるはずはありません。それなのに、事前情報で見ていたデザインは、シンプルでこれといった個性もなく、ますます「ベリーサ」の存在意義を疑わせていました。



そんな訳で、興味薄だった「ベリーサ」ですが、正式発表された写真を見てみると、思ったよりもいい感じ。シンプルだけど安っぽくはなく、「上質感」が、なかなか上手く表現されています。

これなら、国産車では貴重な、年齢性別を問わずに似合うハッチバックとしての存在価値があるかもな、って感想に変わってきたのでした。





さて、そんな「ベリーサ」のデザインですが、パッケージは非常にシンプル。ボディ各部の絞り込みが少なく、エンジンルームとキャビンの2つの四角い箱で構成された、文字通りの2BOXと言える形です。その箱の角を丸く落として、4つのタイヤを収めるフェンダーアーチを貼り付ければ、ほぼ「ベリーサ」の出来上がり。スピード感や力感を表現しようなんていう色気のない実直な形だと言えます。

さらに、そのボディ表面を飾るディテールにしても、これまたシンプル。前後ライトの形は、ごく常識的な範囲だし、余計なキャラクターラインの類も殆ど引かれていません。オプションのメッキパーツは、過剰装飾にならない控えめなアクセントに抑えてあり、好感の持てるもの。全面がギラギラと輝くアルミ蒸着処理をされ、ポジションランプがブルーのリング状にも光るというヘッドライトユニットも、不思議と下品さはありません。

とにかく、どこを見ても変な色気もなければ、過剰に飾り立てたところもないのです。

それなのに、決して安っぽくは見えないのが、「ベリーサ」のポイント。

この、シンプルなデザインを、微妙な抑揚や、正確なチリ合わせとパネルの張りによる面質の良さ、さらには細部にこだわったライトなどによって、実に質感高く見せているのです。



例えば、ただの真っ白なTシャツでも、3枚1,000円のものと、良質の生地で体にフィットする立体裁断を行い、丁寧な縫製で仕上げた1枚10,000円のものとでは、質感に大きな差があるでしょう。

それに、いかにもブランド物といった感じでゴテゴテと飾り立てたTシャツと、ちょっとしたアクセントだけを効かしたシンプルなものとでは、どちらが清潔感があって、誰にでも似合うTシャツと言えるでしょうか。





「ベリーサ」って、つまりは、ワンポイントの付いた10,000円の無地Tシャツみたいなもんなのです。高級でも、人目を引くデザインでもないけれど、きちんとした品質で、清潔感があって、誰にでも似合う、そんな車なのです。



とまぁ、ちょっと誉めすぎな気がしないでもないですが、「上質感」を謳った国産ハッチバックの中で、初めてその言葉を納得できたのが、この「ベリーサ」。もう少し綺麗なボディカラーも欲しいとは思いますが、かっこいい度は、75点!としておきます。



さて、そんな「ベリーサ」のメーカー月販目標は2,500台。相変わらず、マツダの販売目標は手堅いです。

確かに、小さな車に上質感を求める人がどの程度いるのか?サイズに対してちょっと高めの価格設定がどう判断されるのか?などの不安要素を考えると、この目標は妥当な線かもしれません。

それでも僕の予想は、売れて欲しいという期待を込めて、月3,200台としておきます!



・・・ちなみに「ベリーサ」のティーザー広告キャンペーン、あんまり反応が良くなかったみたいですね。

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