「ヴィッツ(2代目)」のデザイン採点と販売台数予想
written on 2005/2/12
日本のコンパクトカーに多大な影響を与えた初代の登場から6年、数多くのトヨタ車の基本となる「ヴィッツ」が2代目に交代しました。
初代の「ヴィッツ」と言えば、初代エスティマ・ハリアーと共に、数少ない好きなトヨタ車の1台。しかし、写真で見た新型は、鼻の下が伸びたようなフロントマスクが変!、フィットを意識し過ぎ!、上質感を謳うのに空気を入れて膨らませたような肥満体は不可!、スポーティーを狙ったトヨタ車の常で、ちっともかっこよくない!、と不満点ばかり。
これで、かっこいいと言い切れる現行のトヨタ車は、ついにプリウスだけになっちゃったなぁと、残念でなりませんでした。
ところがです、ディーラーの店頭に飾られた「ヴィッツ」を見た途端、印象が一変してしまいました。初代とは全く異なるデザインを持った新型は、不満など消し飛ばす強烈な存在感で佇んでいたのです!
その存在感の源は何かというと、ボディサイズに比べて、異様に大きなフロントマスク! 精度感の高いワンモーションボディの凝縮感も予想以上の出来栄えだったんだけれど、そんなものが霞んで見えてしまうくらいに、フロントマスクの迫力がもの凄いのです。
何しろ、ボンネットの半分くらいまであるんじゃないかと思える程に巨大なフロントバンパーなんて、見たことがありません。同じトヨタでは、セリカが似たようなバンパーの切り方をしていますが、ボンネットに対するバンパーの大きさは「ヴィッツ」の圧勝です。
そして、その巨大なバンパーとボンネットは、殆ど段差がないままスムーズに連続し、そこを高い位置から一気に駆け降りる2本のラインによって、一体感を強めています。
通常、こうした処理をすると、バンパーがボンネットに一体化したように見えそうなものなのですが、「ヴィッツ」の場合、バンパーがあまりにも大きいため、逆にボンネットがバンパーに一体化されてしまうという下克上現象が起きています。さらに、出来るだけ高く、出来るだけ後方に置かれた縦型のヘッドライトによって、ボンネットがますます短く見えています。
その結果、どういうことが起きるのかというと、ボンネットがフロントマスクを構成するパーツの一部に成り下がり、極端に言えば、ボンネットという存在が消滅しているのです。こうして、ボンネットまでを含めて大きな一つの塊となったフロントセクション全体を顔としてデザインすることで、かつてないほど巨大なフロントマスクが生まれたのです!
思い返せば、初代「ヴィッツ」が出たときも、従来とは異なる彫刻的で塊感の強いデザインが日本で受け入れられるのかと疑問を持ちました。スターレットの名を捨て、日本車離れした「ヴィッツ」を投入したことは、トヨタにとって相当な冒険だったと思います。
しかし、そんな心配をよそに、「ヴィッツ」はコンパクトカーデザインのあり方を変えてしまうほどの人気者になりました。「ヴィッツ」の登場によって、コンパクトカーは、安いから買うのではなく、デザインを武器として積極的に買う車に変貌したのです。
そして、トヨタは新型「ヴィッツ」で、再びコンパクトカーのデザインに一石を投じようとしているのです。「かわいい」「上質」「スポーティー」「親しみやすい」なんてキーワードは、もう古い! これからのコンパクトカーは「存在感」や「迫力」で勝負なのだと!
最近はコンパクトカーにもプレミアム化の波が押し寄せつつあって、ベリーサやティーダが「上質感」をアピールしているのは、よく知られたところ。となれば、トヨタがこの動きを察知しない訳がありません。
しかし、トヨタが日産やマツダと違うのは、プレミアム感の演出法として、仕立ての良さや品の良さという「上質感」ではなく、「存在感」「迫力」という「高級感」を選んだこと。確かに、この3台を並べて、どれが一番偉そうかと聞いたら、おそらく多くの人が、顔の大きい「ヴィッツ」を選ぶことでしょう。
そう、これこそまさに、トヨタの言う「選んだことに誇りを持てるコンパクトカー」の証! この分かりやすさ、控えめな上質さよりも市場に受け入れられる可能性が大きいのではないでしょうか。
ということで、新型「ヴィッツ」のかっこいい度は80点!
最初こそ、大きな顔に、「新種の生物」に遭遇したかのような違和感を覚えますが、見慣れてくると、これはこれで、新しいバランス感を持ったデザインなんじゃないかと思えてきます。そう言えばドラえもんやピカチューなど、かわいらしいキャラクターは2~3等身が当たり前。もしかすると、今では押し出し感だけが目立つこの顔も、段々とかわいらしく見えてくるのかもしれませんね。
さて、そんな「ヴィッツ」のメーカー月販目標は10,000台。
デビューして間もないパッソの存在もあって、少々低めの目標にしているのでしょうが、僕の予想はフィットと同レベルの、月12,000台としておきます。
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