「ムラーノ(初代)」のデザイン採点と販売台数予想

written on 2004/9/16


デザイン改革に乗り出した日産が、いすゞからヘッドハンティングした中村史郎氏をデザイン本部長へと昇格させたのが2000年の1月。この中村体制になってから開発されたと思われる車をざっと挙げてみると、マーチエルグランドフェアレディZ、キューブ、スカイラインクーペ、ティアナ、プレサージュ、そして最新作が、今回取り上げる「ムラーノ」となります。




こうして見てみると、デザインに関して「ハズレ」の車がないことに、改めてびっくり! 中村さん、「ブランドイメージの足を引っ張る、平均点以下のデザインは出さない」といったニュアンスの発言をされていたと思いますが、見事に、この言葉を実践しています。

デザインが日産の強力な武器になっているとまでは言い切れないとしても、少なくとも、崩壊寸前だった頃の日産のように、デザインが原因で買ってもらえないという事例は激減したに違いありません。



しっかし、会社って、上に立つ人によって、こんなにも変わるもんなんですね。

中村さんばかりがクローズアップされてはいますが、実際にデザインをしているのは、その下で働くデザイナーさん達です。と言っても、デザイナー達まで、中村さんと共に全て入れ替わったなんてことは考えられません。

つまり、デザイン不毛時代の日産は、こうしたデザイナー達の力をまったく生かせていなかったのです。優れたデザインを見付け出し、さらによい方向へと導くことができる人がいるっていうことが、そうしたデザインを恐れずに製品化する決断ができるトップがいるっていうことが、こんなにもデザインを変化させるのです。

そうなのです、デザインの重要性が世界的に増しつつある現在、それが自分の会社から出すべきデザインなのかどうかを見極める力っていうのは、もはや必要不可欠。それを思うと、実力をまったく発揮できないまま三菱を去ったオリビエ・ブーレイ氏には、もっと頑張ってもらいたかったし、ホンダあたりの上層部には、是非ともデザインをきちんと評価できる能力を身に付けてもらいたいものですね。





と、すっかり前置きが長くなってしまいましたが、今回の題材は「ムラーノ」。

冒頭で最新作と言いましたが、北米では2002年末から発売しているし、何度となく自動車雑誌等に登場してきたお陰で、見飽きちゃった感がない訳ではありませんが、改めて見ても、やっぱりかっこいいですね。

「ムラーノ」が初代ハリアーをライバルとして開発されたことは間違いないだろうけど、夜の都会が似合う初代ハリアーとは対照的に、青い空と強い日差しが似合う、おおらかでダイナミックな魅力に溢れています。(余談ですが、現行ハリアーは、だめだめ。何であんな中国の小メーカーが初代ハリアーをパクったかのような、安っぽいデザインになっちゃったんでしょうか?)



まぁ、今更なんで細かい評価は省きますけど、「ムラーノ」もマーチと同様に、どこを取っても個性の強いデザインでありながら、破綻のない優れたバランス感で仕上げられていて、実に見事。

フェンダー上の補助ミラーを排除するために、サイドブラインドモニターとドアミラーに一体型したサイドアンダーミラーを標準装備するというデザインへの拘りも嬉しい限り。強い個性と、完成された美しさを持った、GOODデザインだと思います。



という訳で、この「ムラーノ」、2年以上見続けている車に高得点を付けるのもどうかとは思うけれど、日産の復活を象徴する1台として正当に評価すると、かっこいい度は85点

マーチと並ぶ高得点をあげちゃいましょう!



さてさて、そんな「ムラーノ」、一体、どれくらい売れるのでしょうか?

デザインは確かに魅力的。ハリアーと比べれば割安感もあります。





ただ、どんな人が買うのかっていうのが、イマイチ見え辛いんですよね。デザインから見てもファミリー層じゃあないだろうし、もう少し年齢層が上の人ならハリアーの方に魅力を感じるでしょう。

それに、日本人の大好きなアイデア満載のギミックがないのも大きなマイナス。「ムラーノ」を買えば、こんな使い方ができますよ、とか、こんなときに便利ですよ、というお得感が全然ないのです。

結局、「ムラーノ」って、エレメントあたりと同じく、デザインに惚れた人だけが乗る車なのであって、使い勝手や価格やステイタスを冷静に判断して買う車じゃあないのです。



そうすると、デザインを武器として若者に売り込むのが順当だろうけど、今の若者は車に300万も払えません! となると、「ムラーノ」を買ってくれるのって、懐に余裕のある独身男性ぐらいが関の山。日産も過度の期待はせず、販売目標を月1,000台に設定しています。

そんなこんなで、意外と売れて1,500台との希望も捨て難いのですが、現実を考えて、月800台の予想と致します!

・・・こういう、明るく開放的なアメリカを感じさせる車って、日本では駄目なんですよねぇ。

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