「R2(初代)」のデザイン採点と販売台数予想

written on 2003/12/28


今後のスバルデザインを暗示する注目のモデル、「R2」が登場しました。

大きな特徴は、航空機メーカーとしてのDNAを表現する、「翼」をモチーフとした「スプレッドウィングスグリル」と、空間効率の追求をやめた丸みのあるボディ。独特のグリルもライバルに劣る室内空間も、ユーザーを限定してしまう危険性はありますが、デザインの多様性って面では、なかなか面白い存在です。




で、賛否両論あるであろう新型グリルですが、僕はかなり気に入っています。アクが強いのは事実ですが、自らのルーツを示し、尚且つ独自性のあるデザインには、メーカーの顔として、満点に近い完成度を感じます。

国産メーカーも、最近はデザインアイデンティティの確立に注目しつつありますが、そのデザインに歴史的背景を匂わせるものはなく、ブランドマークにしても、殆どはアルファベットを単純に図案化しただけもの。

それに対し、同じく富士重工のルーツを現す六連星マークと組み合せたスプレッドグリルは、自らの歴史の重さと深さを強烈に感じさせ、日本で最も説得力のあるグリルデザインだと言うことができます。(次点は三菱。ブーレイ顔は、フジヤマをバックに輝く三菱マークがモチーフに違いないと思うのですが・・・。)



そして、もう一つの特徴の丸っこいボディも好印象。前と後ろだけ丸みがあって、キャビン部分は箱型のライフと比べると、デザイン優先の潔さを感じます。

特に、平板なライフのボディサイドには、「3枚におろした両側の2枚はどこに行っちゃったの?」って言いたくなるような強引さを感じますが、「R2」のサイドパネルには豊かな張りがあり、軽サイズでありながらバランスの取れた、完成度の高いデザインだと思います。

MAXやライフを見れば分かるように、やっぱり軽のサイズで室内空間と丸みのあるデザインを両立させるのって、難しいんですよね。「R2」も、全高は1,520mmもあるんで、居住性をまるで無視しているって訳ではないのでしょうが、デザインとスペース、どっちつかずの中途半端な見苦しさがない点は評価していいでしょう。





さて、そんな「R2」のデザインキーワードは「スポーティー&エレガント」。アロマテラピーを取り入れたり、女性を意識したサイト構成を見ても分かるように、どうやら、上品さを前面に打ち出しているようです。

しかしです、「R2」って、「エレガント」に見えますか?

実のところ、僕が「R2」からイメージするものって、そんなものとは程遠い「戦闘機」なのです!

いかにも「空気取入口」という雰囲気の無骨なフロントグリルや、力強いフェンダーアーチ。ガラス面積が小さく、Cピラーを中心に、金属パネルで包まれた印象の、頑丈そうなボディ。パネル強度を増すためのリブ加工に見えてしまう、伸びやかさを表現したはずのサイドモール。

こうしたディテールが、金属の頑丈さを感じる、レトロな兵器を連想させてしまうのです。



ちなみに、航空機メーカーがルーツと言えば聞こえはいいですが、富士重工の前身である中島飛行機は、実質的には「戦闘機メーカー」。僕の考え過ぎかもしれませんが、こうした歴史が、兵器の中でも特に「戦闘機」の印象を重ねさせてしまうのでしょう。

もっとも、だからといって「R2」が破壊的で邪悪な車に見えるってわけじゃあありません。例えるならば、バタバタと音を立てて飛び回る、宮崎駿の描くノスタルジックな戦闘機のように、金属の温かさと懐かしさを感じるデザインだと思います。

しかし、今の世界情勢を考えると、まさか「戦闘機」がモチーフだなんて言えるはずがありません。戦闘機を、懐かしいデザインだとして美化してしまう訳にもいかないでしょう。




正直言って、僕は、「R2」に「エレガント」さなんて、ちっとも感じることができません。「スポーティー」はいいのですが、「エレガント」なんて言葉が、「R2」の魅力を現しているとも思えません。

「R2」って本当は、もっと飛行機(戦闘機)のイメージと結び付けたコンセプトの車だったんじゃないかと思うんですよね。

だけど、飛行機との関連性を強くアピールできる状況ではなくなってしまったためなのか、それとも単純に女性ユーザーを取り込むための苦肉の策なのかは分かりませんが、アロマやエレガントといったデザインとはチグハグな広告展開には、違和感を覚えずにはいられないのです。

個性的で魅力的なデザインの「R2」ですが、こうした広告戦略が、イメージを曖昧なものにしてしまわないかどうか、ちょっと気になるところですね。



さてさて、そんなこんなで「R2」のかっこいい度は83点

販売台数予想は月6,500台

個人的には好きなデザインだけど、居住性を考えても主流になれる車ではありません。軽としては控えめな台数だけど、ニッチ商品の「R2」がメーカー目標の月8,000台を達成するのは難しいんじゃないでしょうかね。

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