「LS(4代目)」&「オロチ(初代)」のデザイン採点と販売台数予想
written on 2006/12/12 (2006/12/20 イラスト追加)
今回のお題は、主役不在のままスタートしたレクサスが1年の間待ち焦がれ続けた「LS」と、5年前の発表以来、市販化を望まれ続けたミツオカの「オロチ」です。
「LS」は、世界に誇る日本一のプレミアムブランドが送り出す、「最高級セダン」。片や「オロチ」は、日本最小のカーメーカーが情熱だけで作り上げた、「ファッションスーパーカー」。
1,000万円レベルという値段以外、全く正反対に見えるこの2台ですが、デザインに関して言えば、どちらも凄く日本的だなぁという共通性を感じたので、一緒に取り上げてみることにしました。
そんな訳で、まずは「LS」のデザインを見てみると、僕が連想するのは「着物美人」。欧州プレミアムが、ボディラインをより強調するドレスを身に纏ったグラマーな美人だとすれば、「LS」は、スレンダーで凛とした立ち姿を見せる、着物姿の美人です。
遠くからでも分かりやすいデザインやキャラクターラインで豪華に飾り、性欲丸出しのセクシーさで迫ってくる欧州勢とは違い、「LS」には、体のラインを敢えて隠そうとする着物のように、見えるか見えないかといった微妙な抑揚で表情を持たせた、禁欲的な美しさがあります。
ただし、その着物を身に着けているのは、清楚な美しさの日本女性ではなく、メリハリのきいたスタイルの外国人女性。遠目にはシンプルなデザインも、近付いて見れば、着物の下に隠された豊かなボディラインが見えてくるようです。
つまり、「LS」のデザインとは、国際的に通用するダイナミックなボディを、「抑制」や「静」といった日本的な美意識を感じさせる「着物」で包み込んだようなもの。欧州プレミアムに、「存在感」という同じ土俵で挑むのではなく、隠すことで逆に想像力を掻き立たせる類の美しさで勝負している訳です。
・・・なーんてことを考えていると、外国人が日本文化に憧れて「Kimono」を着ているかのような「LS」のデザインって、意外と挑戦的なんじゃないのかなぁという気がしてきます。
何故って、セルシオは、メルセデスを追い続けただけの、欧州に憧れる日本車でしたが、「LS」では一転して、日本文化に憧れる欧州車を表現しているのです。一見、存在感が薄く感じられる「LS」だけど、実は欧州に対する挑戦状とも言える、日本人としてのプライドに溢れた画期的なデザインなのかもしれませんね。
一方、「オロチ」のデザインはといえば、名前のまんま、日本神話の伝説の大蛇「ヤマタノオロチ」を見事に表現した、歴史に残る怪作です!
今までは、TVRの各車が、有機的なデザインの最先端をいっていた訳だけど、「オロチ」を見た後では、TVRなんて、充分常識の範囲内。「オロチ」の睨みつける目と、薄気味悪く微笑む口元の前では、悪顔で売っている最近のホンダ車も、大きな口を開けて虚勢を張っただけの、こけおどしにしか見えません。気持ち悪さでは、2代目フォード・トーラスもかなりのものですが、かっこよさまで含めれば、「オロチ」の敵ではないでしょう。
とにかく、有機的で気持ちの悪いかっこよさを極めた「オロチ」のデザインは、世界中のどの車の隣に置いたって、圧倒的な存在感を放つに違いなのです!
そして何より素晴らしいのは、このおどろおどろしいデザインが、「LS」と同じく、やはり、「日本」を強く感じさせるものだということ。
ヤマタノオロチという大蛇の怪物をイメージした「オロチ」のデザインは、生物や自然への陰の信仰心を持つ日本人にしか生み出すことのできないものだと思うのです。プロポーション自体は、欧州で生まれた典型的なスーパーカースタイルだとしても、そこに纏ったデザインは、紛れも無い日本文化そのものなのです!
・・・とは言っても、どちらかといえば陽の日本文化を表現した「LS」とは違い、「オロチ」の持つ陰の日本文化が海外に浸透しているとは思えません。多分、日本以外では、「オロチ」の自然信仰的なかっこよさは理解されないでしょう。
でも、それでもいいんです!
欧州のスーパーカーの真似ではなく、日本人の感覚で、新しいデザインを生み出したことが重要なのです! 世界には誇れないかもしれないけれど、日本人なら、「オロチ」のかっこよさが分かるんじゃないでしょうかね?
ということで、欧州生まれの自動車を、
かっこいい度は、「LS」が75点、「オロチ」が82点!
日本の社長さん、是非、この2台を車庫に並べましょう!
さてさて、最後に販売台数予想ですが、メーカー目標は、「LS」が月1,300台、「オロチ」が4年間で400台の生産予定なので、単純に割り算すれば、月8台。
僕の予想では、「LS」が目標を上回る、月1,700台、「オロチ」は目標、というか生産予定通りの、月8台!
「オロチ」、大きな問題なく、400台をきっちり販売し切れるといいですね。
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