「カルディナ(3代目)」のデザイン採点と販売台数予想

written on 2002/10/23


トヨタのレガシィ対抗車、「カルディナ」が3代目になりました。初代はバンとの並売がイメージを低下、2代目でバンを切り捨てたものの、初代と変わり映えのしないデザインもあって、レガシィには惨敗続き。そこで今度は、真っ向勝負は避けて、思い切ったスポーティーデザインでの登場です。

見た目よりは荷物を積めるらしいけど、ここまで行っちゃうと、荷室の広いセリカみたいなもの。スポーツカーやスペシャルティカーが欲しくて選択肢に入れることはあっても、ワゴンが欲しくて「カルディナ」を選ぶ人は、あんまりいないんじゃないでしょうか。




それにしても、こんなデザインで登場したのは、レガシィへの負けを認めたようなもの。天下のトヨタが、小メーカーのスバルが作る車に敵わなかったのです。ワゴンとしての使い勝手や、車としての基本性能をきちんと磨き込んだレガシィを超える車が作れなかったのです。仕方ないから、まっとうなワゴンは諦めて、極端なスポーティーさで若者にでもアピールしようってのが、この3代目でしょう。

でもですねぇ、確かにレガシィはいい車だし、それがトヨタの挑戦を跳ね除けたってのは痛快な話ではあるんだけど、世界のトヨタが連敗の末、勝負から逃げ出したのは、ちょっと残念。



ところで、トヨタって、日本一の自動車メーカーでありながら、他社の後追いが多すぎます。誰かが新しいジャンルを開拓すると、あからさまな対抗車をすかさず送り込み、圧倒的な販売力で市場を奪い去るってのが、常套手段。

そりゃ、企業ですから、売れる車種に力を入れるのは当然だけど、トヨタほどのメーカーが、そんなニセブランド商法みたいな戦略でシェアを伸ばしているのは、情けない気がするのですが・・・。



まぁ、こうした手法の是非はともかく、販売台数という結果だけを見れば、オデッセイに対するイプサム、ステップワゴンへのノア・ヴォクシー、エルグランドとアルファードなど、ほぼ全ジャンルでトヨタの戦略は成功しています。




では何故、レガシィにだけは勝てなかったのでしょうか?

オデッセイやステップワゴンは、今までに無かった使いやすさが命です。だから、そのパッケージングや外観を真似れば、それなりに売れる車ができあがります。アルファードは、エルグランドよりも豪華で迫力があれば満足してもらえます。

つまり、見た目で特徴を表している車には、デザイン(パッケージング)を似せることで、比較的間単に対抗車を作ることがきてしまうのです。

ところが、ワゴンという一般的な形態の上、デザインにもそれほどの個性を持たないレガシィには、外観を近づけたところで、あまり意味がありません。何故なら、レガシィの人気の理由は「本物感」だと思うからです。

もちろん、落ち着きと重厚感を持つレガシィのデザインも重要な要素ではあるけれど、それだけでは「本物感」は表現できません。「本物感」ってのは、熟成を重ね、常に最良の製品を作ってきたという実績と信頼感が加わって初めて生み出される、オーラみたいなもんなのです。



日本での乗用ミニバンは、まだまだ歴史も浅い流行り物だし、「本物感」まで持ったブランド車はまだ登場していません。そんなジャンルなら、ニセブランドでも充分勝負していけます。それっぽい車を、それなりに作れば、そこそこ売れるでしょう。

それに対し、セダンやワゴンといった、既に熟成期に入ったジャンルは、真剣に作り込んだ車でなければ売れない時代になっているんじゃないでしょうか。流行に乗った「売れそうな車」ではなくて、本当のブランド品である「いい車」を作らなければ駄目なのです。手軽に作った、ニセブランド車では、レガシィという本物のブランド車に勝てるはずがなかったのです。





それなのに、トヨタはレガシィへの直球勝負を放棄してしまいました。ワゴンブームが去った今、真剣にレガシィ対抗車を作ったって商売的には旨みがないのも理由でしょう。

でも、これはつまり、「いい車」を真面目に作るなんて手間のかかることは諦めて、販売台数の見込める流行り物や、いずれ流行になるかもしれないニッチ商品に力を注ぐんだっていう、トヨタからのメッセージのようにも思えてしまうのです。

初代セルシオで世界の度肝を抜き、ヴィッツで日本のコンパクトカーのあり方を変えたトヨタです。本物のブランド車を作る力が無いわけはありません。ましてや、日産・マツダ・三菱といった負け組メーカーが、「本物感」の重要性に気付き始めているのです。

そろそろ、幼稚なスポーティーデザインを連発するのは止めて、真剣に作った車なんだということを、デザインでも表現するべき時期だと思うんですけどね・・・。



そうそう、今回、話がそれ気味でしたが、「カルディナ」のかっこいい度は、厳しく10点

予想販売台数は、トヨタの月間目標4,000台に対し、月1,500台としておきます。

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