「iQ(初代)」のデザイン採点と販売台数予想

written on 2008/10/9 (2008/10/15 メーカー月販目標、販売予想台数訂正)



これまでにも、R1ツインが開拓に失敗してきた、日本のマイクロカー市場。ガソリン高騰や環境問題で必要性が高まりつつあるとはいえ、まだまだハードルの高いこの分野に、王者トヨタが「iQ」で挑戦することになりました。

こうした採算を度外視した企画を通せるとは、さすがはトヨタ! 初代プリウス以来久し振りとなる、社会的意義のある提案です。

でも、「iQ」がかっこいいかと聞かれると、かな~り微妙。スマートが環境意識のアピールとお洒落さを両立しているのに比べて、遊び心の無い優等生的な堅苦しさばかりが目立ってしまいます。とはいえ、真面目なおじさんや企業にとっては、落ち着いた「iQ」の方が馴染みやすくていいのかもしれませんね。



さて、そんな「iQ」が、どれだけ売れるのかは全くの未知数。トヨタとしては、ヴィッツの4分の1程の、月2,500台を目標としています。

約500台だったツインR1の5倍も売れるんだろうか、いやいやトヨタの販売力があれば軽くクリアするかもしれないぞ、などと悩むところですが、僕の予想はちょっとプラスの月2,800台

発売から半年ぐらいで失速するという想定です。



ところで、こうしたシティコミューターって、スマートやアイみたいに、つるんとしたワンモーションフォルムになるのが一般的。短い全長でキャビンを大きく取るため、リヤにエンジンを搭載するケースが多いせいでもあるでしょう。

それに対して、独立したエンジンルームを持つのが、スズキのツイン。「iQ」はどちらかといえば、ツインと同じく、ボンネットの存在感のある2BOXスタイルになっています。





けれど、全長3メートル程度の2BOXって、本来はもう少し長い車を切り詰めたような窮屈さを感じちゃうんですよね。

どうやら、車のスタイルには、それぞれ適したサイズがあるようで、ミニマムサイズならボディ全部が居住スペースのようなワンモーション、もうちょっと余裕があればエンジンを前に押し出した2BOX、さらに大きくなると後ろにトランクも加えた3BOXっていうのが、自然な流れだと思うのです。



つまり、マイクロカーに最適なのは、リヤエンジンのワンモーション。R1だって、FFなのにワンモーションフォルムを採用したお陰で、寸詰まりな印象はありません。けれども、2BOXのツインと「iQ」には、どうしても短い全長をエンジンルームとキャビンで奪い合っているような無理やり感が漂ってしまうのです。

このアンバランスさは、ツインみたいに玩具っぽいキャラならチャームポイントと言えなくもないけれど、プレミアムを謳う「iQ」となると話は別。ましてや、4人も乗せようなんて、詰め放題の袋にミカンをぎゅうぎゅうに押し込んだようなみみっちさでは、とてもプレミアムだと思うことは出来んのです。

やっぱりここは、贅沢に「iQ」専用のリヤエンジンプラットフォームを使った無理のないワンモーションスタイルでこそ、本当のプレミアム感を醸し出せたんじゃないでしょうかね。



それと、もう一つ腑に落ちないのは、独立したエンジンルームに加え、前面には大きなグリルの付きそうな垂直面まであるのに、控えめなスリットだけのグリルレス風な顔つきにしていること。シルエットはフロントエンジンの2BOXなのに、ディテールは、そのエンジンの存在を消そうとしているのです。

もしかすると、エコなイメージをアピールするためにエンジンの存在を隠したいのかもしれないけれど、だったら、ボンネットの先端をもっとスラントさせてワンモーションに近いスタイルにした方が、よっぽどグリルレスとの整合性が取れるし、マイクロカーのデザインとしてのバランスも良くなったはずなのです!




まぁ、実際問題、そんな高い位置にグリルを付けても裏にエンジンはなさそうだし、衝突安全性の関係でエンジン周りに空間が必要だったりもするのでしょう。そう考えれば、決して意味のないデザインだっていう訳でもありません。

だけれども、エンジンの入っていなさそうなフロントマスクのせいで、ただでさえアンバランスの基になっている水平に伸びたボンネットが、余計に無駄で邪魔なものに見えてしまうのです。



繰り返しますが、マイクロカーにはリヤエンジンのワンモーションがベストです。FFになるなら、R1のように、せめてプロポーションだけでもワンモーションにするべきです。それでも敢えて2BOXを選ぶのであれば、いっそのこと、立派なグリルを付けて、「フロントにエンジンがあるんだから2BOXで仕方ないじゃん!」って開き直る手もあったんじゃないでしょうかね。



さてさて、最初に採算度外視とは言ったけど、このサイズには無理のあるFFを採用したのは、当然、他の小型車への技術転用を考えてのこと。

正直、好きなデザインではないけれど、こうしたコスト優先の事情も考慮して、かっこいい度は、50点!としておきます。
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